MENU

倫理観をぶっ壊す 絵本作家エドワード・ゴーリー

 

エドワード・ゴーリー(Edward Gorey, 1925年2月22日2000年4月15日

アメリカ絵本作家

ジャンルは絵本だが、道徳や倫理観などは全く気にせず、残酷で不条理に満ちた世界観と、韻を踏んだ言語表現で醸し出される深い寓意感、そしてごく細い線で執拗に描かれたモノクロームの質感のイラストにおける高い芸術性が、「大人のための絵本」として世界各国で熱心な称賛と支持を受けている子供の頃から猫好きで、生涯独身を通し、軍隊生活以外では生涯猫と共に生活していたという。

感想

アメリカは映画やゲームにおいて子供の死はタブーであり、直接的な表現がされることは極稀である。 

しかし、エドワード・ゴーリーの作品の驚くところは彼がそんなアメリカ社会で生まれ育ったにもかかわらず子供であろうと容赦しない衝撃のストーリーだ。

 

例えば彼の作品の一つ「敬虔な幼子」。

本作は信心深い少年の短い一生とその最期を描いている。

 

信心深い者の死という点では

などを髣髴させる。

 

「信心深い者の死」の演出が多用された19世紀では、イギリスでは子供の死亡率が非常に高かったことから、創作作品の中では子供が信仰心を持って無垢のまま死んでゆくような演出が多かった。 

このような演出で人々の涙を誘う場面は19世紀のアメリカ、イギリスの小説や芝居で多用されており、本作もそのようなジャンルなのかと思った。

しかしながら本作の主人公は、信仰心から数々の善行を行っているものの、それらは時に急進的、抑圧的、独善的とも受け取れる。両親に手伝い事がないかとトンカチを手にして尋ねる場面があり、これについて訳者の柴田元幸は「『邪(よこしま)な子供を殴り殺しなさい』と言われたら素直にほいほい殴り殺してしまいそうな勢いではないか」と述べている

関連画像

単に純粋で信心深い子供の死と要約しきれない作品である。 

絵本にもさまざまなジャンルがあって面白い。その中でもゴーゴリー作品には、色んな意味で予想を裏切られる。だからこそ、時代を超え今もなお世界中の様々な人々に読まれているのだろう。